#2_分業と兼業

塚本 聡 2016.6.08

先日、米・パナビジョン社が、RED DigitalCinema社、
パナビジョン傘下のLight Iron社と共同開発した
ハイエンドでコンパクトな「8K」デジタルシネマカメラ「DXL」が発表されました。

https://www.youtube.com/watch?v=DxUQ2wV_woo

パナビジョンが光学部分、REDがセンサー部分、Light Ironが色部分と
それぞれの特色が盛り込まれたハイエンドデジタルシネマカメラになっているようですが、
一体どんな映像になるのかとても気になるところです。
 
 
  
 
                   
■兼業化する映像制作

映像制作はチームワークです。
そして基本的には分業制です。

制作部・撮影部・照明部・美術部・特機部など大きく部分けされていて
それぞれの責任で業務を進めます。
その中でさらに分業化されてその部のチーフが全体をまとめます。

 
例えば私たち制作部。
クライアントと内容や予算の話をするのはプロデューサー、
イメージを具体的な内容に落とし込み、実際に作っていくのはディレクター、
計画を立て準備をし撮影を滞りなく進めるのはプロダクションマネージャー。

と、
このように一応分業されています。

 
撮影部であればカメラマンがボスとなって
1st/2nd/3rd/のアシスタントをまとめます。
ファースト(チーフ)カメラアシスタントは露出を計り、
セカンドカメラアシスタントがフォーカスを、
サードカメラアシスタントは機材のセットアップ、
とそれぞれ役割が与えられています。
美術部でも、セットデザイナー、大道具、小道具、装飾など分業されています。

 
基本的にはそれらをとりまとめて一つのチームを作って制作に臨むのですが、
ここ最近はイレギュラーな制作体制で臨むことが増えてきました。

   
最近では プロデューサーが演出を兼ねる時もありますし
撮影や編集をすることもあります。
ディレクターが予算管理をしてスタッフィングをすることも、
自身で撮影やCGまで兼任することもあります。
プロダクションマネージャーが小道具を集めたり
材料を用意して美術や衣裳を作ることも多々あります。
さながらDITのように撮影後のデータをバックアップしたり、
LOG素材にLUTを当てて変換書き出ししたり、
デジタイズだけでなく、オフラインまですることもあります。
もう、もはや肩書はあまり意味がなくなってきました。

 
しかし実は正当な流れかと思います。

 
機材やソフトのハードルが下がったおかげで簡単に
安く早く作れるようになったので当然制作費が下がっていく。
なのに少人数でもそれなりのクオリティとスピードでできるようになってしまった。

そして結果的に、その便利さと引き換えに一人ひとりが担う部分が増えてしまったのです。
 
 
 
 
                    
■どこにメリットを見出すか
兼業化によってやることが増え、制作側の負担が大きくなったのは正直大変です。
しかし逆に考えると、今まではタッチできない領域だったものが身近になることで、
コントロールが利くようになり、フットワークが良くなったという点では
喜ぶことと捉えていいかもしれません。
  
  
またちょっとした作業でわざわざプロを呼ばなければならないという、
通例だからという理由でかかってくるコストを削ってパフォーマンスを上げることで
クライアントに対して営業努力をしている、ということも大きいかもしれません。
 
もちろん、餅は餅屋、責任という部分でも絶対的にプロが必要な場面はあるわけで、
そういう時にこそきちんと分業する、というメリハリが生まれたようにも感じます。

  
もう一つは、「自分たちでやりたい」ということが
実現できているというのもあるのかなと思います。

制作業として全ての行程を見ることができて、
いろんな現場で各部所のプロたちから教えを請うことができるので
こんなに素晴らしい実践の場はありません。
 
そうやって自分のできることを広げられれば、
それはそれで強みになるのではないかと考えています。

 
 
 
 
 
  
 
                  
■自分たちならではのやりかたで

さて、分業ということについて調べていくと
【垂直統合型】と【水平分業型】というビジネス用語に辿り着きました。

 
特にものづくりを主体にする会社の経営方針でよく議論になっていると言います。
ちょっと難しい話になりますが、

 
 垂直統合とは、研究開発から設計、試作、量産までの工程を自社で一貫して持つ生産モデル
 水平分業とは、開発や製造の各段階で外部に発注して効率化、柔軟化を図るモデル

 
とのことです。

 
垂直統合型は、
コンセプトに沿って一貫して製造できるのでブランドやクオリティ、
納期などを管理できるのが強みで、利益を全て享受できる一方
設備投資の負担が大きく、市場が変化した時の対応が難しくなる、と言われます。

 
水平分業型は、
開発・製造などを得意分野に特化した複数の企業に委託することによって、
自社は付加価値の高い活動に集中できるのが強みで、
設備投資の負担は小さく、市場が変化への対応が早い、と言われます。

 
ここでよく引き合いに出されるのはアップル社の話で
アップル社は自社工場を持たず、製造を外部に委託する水平分業に見えながら
必要な工作機械はアップル社が購入し、製造委託先の品質については徹底的に管理する
垂直統合と水平分業を巧みにミックスさせてiPhoneを成功させたと言われています。

   
それはさておき、映像制作をものづくりと捉えて当てはめると
私たちのこれからの映像制作活動は一体どちらに向いているのでしょうか。

大雑把に、【企画—準備—撮影—編集—納品】という流れで考えると、
大きな規模の受注仕事の制作においては、
企画は自社で行い、撮影や編集は外部に協力してもらう水平分業型、
小規模な仕事やオリジナルの映像作りにおいては、
企画・撮影・編集は全て自社で行い、ブランドとクオリティを高める垂直統合型、

 
と、
その都度バランスよく柔軟に使い分けて制作できるのではないかと考えています。

 
それも、映像という「物ではないものづくり」だからこそできるわざなのかもしれません。

    
今回はこの辺で。

塚本 聡